2012年1月アーカイブ

昨年の12月26日に茨城県守谷市で行なった、「放射能汚染から子どもを守ろう@守谷」主催の親子ワークショップ「親子で知ろう!考えよう!放射能」を、主催者の方がブログに報告してくださっていますので、そのページを紹介させていただきます。

「放射能汚染から子どもを守ろう@守谷」主催の
親子ワークショップ「親子で知ろう!考えよう!放射能」

科学技術融合財団の助成を受けて、1年半ほどをかけて開発してきた、生活習慣病予防のためのカードゲームが完成しました。その概要をまとめた文書を掲載しましので、ご覧下さい。

●「ネゴシエート・キラー」ゲームのルールガイド→negotiate-killer_guide.pdf

このゲームに関心を抱かれる方々に、実際に試していただきたいと思います。

2012年1月~2月半ばにかけて、実演の機会を数回設けたいと思いますので、ゲームをしてみたいと思われる方はぜひお気軽にお声がけください。6人揃った時点で1グループを作るなどして、グループごとに日時を確定して、実施に持ち込みます。友人や知人、職場の仲間などに呼びかけて、グループで申し込んでいただくと、すぐさま、実施日を決めることができるかと思います。

除染等業務に従事する労働者の放射線障害防止のための省令などに対するコメント

2012年1月4日

石塚 隆記(NPO法人市民科学研究室・理事、第一種放射線取扱主任者)

文書のpdfファイルはこちらから→ csijreport_ishizuka_20120104.pdf


1. はじめに

厚生労働省は、2011年12月22日に、「東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則」及びこれに基づく告示(以下、まとめて「除染電離則」)を公布した。除染電離則は、2012年1月1日から施行されている。

厚生労働省は、除染電離則により、放射性物質に汚染された土壌等を除染する業務に従事する労働者の安全を守ろうとしているようなのであるが、安全確保の点から見て少し気になったポイントがあったので、ここで指摘したい。

また、除染電離則の公布と併せて、厚生労働省は、「除染等業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン」(以下、「除染ガイドライン」)を制定・公表している。除染ガイドラインは、除染を行おうとするボランティアや住民が活用できることも意図して作成されたようなのであるが、除染電離則と同様に、安全確保の点で気になる点があるので、これにも触れてみたい。
そもそも、なぜ、除染作業の際の放射線管理について気になっているのか、その理由について、はじめに述べておきたい。最後に除染作業を実際に行う方に対する所感を述べて、この文書をまとめたい。


2. なぜ除染作業の際の放射線の管理について気になっているのか?

○広大な土地が除染対象地域となること予想されるため

2011年11月11日に環境省から示された放射性物質汚染対処特措法の基本方針によると、「長期的な目標として追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下となること」を目指すこととしている。この長期目標を達成するために、今後、広大な面積の除染が行われることが予想される。

具体的には、環境省の第2回環境回復検討会の資料7によると、実行線量で年間1シーベルト以上の空間線量率の土地を除染することになった場合、除染対象面積のオーダーは1,000km2と推定されている(除染対象面積の推定は、いくつもの前提条件に基づいて行われていることから、正確な推定値については上記の原典を参照されたい)。東京ドーム1個分の面積を概ね0.05km2とすると、1,000km2の面積は、東京ドーム20,000個分に相当する。途方もなく広大な土地が除染対象の地域となっていることが分かる。

○除染作業への従事者が多数になることが予想されるため

人間の手を一切使わずに除染ができるような夢の技術があるとは思えないので、除染作業には人間が従事することになると予想される。ここで考えてみたいのは、東京ドーム1個分の面積の土地を除染するには、どれだけの人間が必要か?ということである。仮に1人の人間が東京ドーム一個分の面積の土地の除染作業に従事することになったとしよう。その場合、20,000人の人間が、総計で必要となると推定される。これは、「多数」と言っても差し支えない人数だろう。
このように、多数の人間が今後除染作業に従事することが予想されるため、除染作業の際に、無用な被ばくを避けることは重要だと考えられる。そのため、除染電離則や除染ガイドラインは適切なものであるべきと考えている。


3. 除染電離則と除染ガイドラインのどこが気になるのか?

除染電離則それと除染ガイドラインで気になった点について、以下、2点を挙げる。

○作業の指揮者の備えるべき要件

除染電離則によると、除染を行う事業者は、除染作業を指揮するために必要な能力を有すると認められる者のうちから、作業の指揮者を定めて、除染作業を統括管理させなければならないとの旨が定められている。ここで気になるのが、「必要な能力を有すると認められる者」の定義である。除染電離則の第9条の解説の123ページによると、厚生労働省が実施する丸一日の講習を終えて、一定の知識を有するものであれば、必要な能力を有するものと認められるように読める。果たして、作業の指揮者が備えるべき要件は、これで足りているのだろうか?私の答えは、ノーである。その根拠は、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(以下、「放射線障害防止法」)にある。

放射線障害防止法上では、例えば、セシウム137の汚染濃度が10,000Bq/kg以上の土壌を1kg以上取り扱う業者は、第一種放射線取扱主任者を選任しなければならないとされている。第一種放射線取扱主任者は、放射性物質を取り扱う作業者に放射線障害が生じないように、種々の管理を統括することが求められている。第一種放射線取扱主任者とは、丸二日間にわたって実施される国家試験に合格し、丸5日間にわたり実施される講習を修了したものを指す。

放射線障害防止の知識に関して、第一種放射線取扱主任者と、除染電離則の「必要な能力を有すると認められる者」の間には大きなギャップがあるように思える。除染電離則の「必要な能力を有すると認められる者」に、20,000人以上と想定される除染に従事する方の統括管理をまかせて、大丈夫なのだろうか?

○個人被ばく線量の管理

除染電離則及び除染ガイドラインによると、平均空間線量率が地上1メートルで毎時2.5マイクロシーベルト以下の場所で除染作業に従事する方(ボランティアの方を含む)は、個人被ばく線量計を装着することを義務付けられていない(除染電離則ではこの規定についてもっと長々と述べられているが、要点だけ書くとこうなる)。これは、何を意味しているのだろうか?

再び、放射線障害防止法を例にとって、この規定を分析してみよう。まず、放射線障害防止法では、管理区域(例えば、セシウム134とセシウム137に合計で40,000Bq/m2汚染されている場所)に立ち入る者を放射線業務従事者として定め、放射線業務従事者は実効線量で5年で100mSv、かつ1年で50mSvを超える個人被ばくをしてはらなないと定めている。この規制を満たすために、通常、放射線業務従事者は個人線量計を胸ポケットなどに装着して管理区域に立ち入っており、第一種放射線取扱主任者は、この個人被ばく線量計の値でもって、放射線業務従事者の個人被ばく線量が基準値を超えないように管理している。

では、セシウム134とセシウム137に合計で40,000Bq/m2汚染されている場所というのは、どの程度の空間線量率なのだろうか?IAEAの資料の99ページによると、これは、概ね地上1メートルの空間線量率が毎時0.15マイクロシーベルトの場所に相当する
(なお、この換算にあたっては、田崎晴明氏の「ベクレルからシーベルトへ」()、それと牧野淳一郎氏の「牧野の公開日誌」も参照した)。

もともと放射線障害防止法は、今回のように無限に広い土地に分布したセシウムを除染する作業を想定して制定されたものでないようなので、除染電離則と一概には比較できない。加えて、除染電離則でも、個人被ばく線量の実測を求めこそしていないが、空間線量率からの個人被ばく線量の推定などは義務付けている。が、それにしても、毎時2.5マイクロシーベルトという閾値を設けて、個人線量計の装着義務を免除する必要はあるのだろうか?


4. まとめ

NPO法人市民科学研究室では、市民の視点に立って、社会問題を科学的な視点から分析し、「あれ、何かおかしいぞ?」、「あれ、何か気になるぞ?」といったことを広く社会に問いかける活動を行っています。今回取り上げた除染作業は、今後、企業の方だけでなくて、ボランティアや住民の方も積極的に関与することになる可能性の高い仕事だと思われます。

企業の従業員の方も、ボランティアの方も、住民の方も、みな市民であることに変わりありません。除染作業について何か気になることがある方は、お気軽にNPO法人市民科学研究室にお問合せください。どこまで一緒に解決策を考えることができるかも含めて、ご相談の上、ご助言できればと考えています。


付記

NPO法人市民科学研究室が継続して活動していくため(事務所の家賃や事務員の人件費の支払などをするため)には、みなさまのご支援が必要です。もしよろしければ、NPO法人市民科学研究室のホームページをご参照いただき、主旨に賛同いただける方は、寄付いただくか、または会員になってくださいますようお願いします。

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